これまで筆者らは,他者理解やユーザーの潜在的な欲求を発見するための手法として,フィールドワークをベースとした授業カリキュラムの組み立てを模索してきた.こうした大学の授業カリキュラムにおいては,限られた時間や場所での実施が求められることや,一度に数十名学生が受講することなど,多くの制約があることから,毎年授業カリキュラムの見直しを図る必要がある.
他方,企業や教育機関のあいだでは,人間中心設計を軸としたワークショップ(研修や授業も含む)が多く実施されるようになっている.こうしたワークショップでは,実施時間や参加人数などの制約によって多少の進行や実施内容に違いは見られるものの,ワークショップの指標や目的などに大きな差異は見られない.一方で,実施するプロセスや進め方をはじめ,人間中心設計の「人間」を捉える際の思考や志向はワークショップによって異なる.
そこで,本研究では,人間中心設計に関する二つのワークショップを対象として,それぞれのプロセスや着眼点を比較する.そして,限られた時間で円滑に他者理解やユーザーの潜在的な欲求を見出すために有効なプロセスを見出し,人間中心設計を学ぶうえで必要な仕組みを提示する.