本課題は、(1)理論的研究(2)国際共同研究(3)実践的研究の3つの柱を立てて進めることを計画して進めてきた。
(1)理論的研究としては、本課題に参加している研究者全員が寄稿した英語の著書Arts-Based Methods in Education in JapanがオランダのBrill社から出版された。執筆者の多くは日本人であるが海外の出版社から英語で発信したことで、国際共同研究の基盤にもなる。また国内でも『アートベース・リサーチがひらく教育の実践と理論(ABRから始まる探究(1) 高等教育編)』『子どもの表現とアートベース・リサーチの出会い(ABRから始まる探究(2)初等教育編)』という2冊の本を編集し出版した。この他に学会や研究会で美術教育を市民性教育に接続するための基礎的な文献を整理するなどの研究成果を発表した。
(2)国際共同研究は、コロナ禍のため当初参加を予定していた国際美術教育学会が延期になってしまったが、それでもオンラインでの発表や、実践をもとにした国際的な共著が出版された。Walking with A/r/tographyは、研究代表者小松と研究分担者笠原が参加した国際共同研究の成果である。笠原は韓国、中国、カナダの研究者との共同研究を進めている。
(3)実践的研究としては、研究分担者生井が2022年3月に「自由」をテーマにした哲学対話を行った。笠原は、アートに基礎付けられたワークショップの実践を行いその体験理解について、国内外で研究発表を行った。また、駅ビルの空きテナントでワークショップや展示を行うことで美術の場を市民に開く社会実装を試みた。研究代表者と研究分担者との研究会としては、オンラインで2回、対面で3回行い、研究の進捗状況をそれぞれが発表したうえで意見交換した。