現在、雰囲気や地域らしさといった都市の質的な側面に対する関心が高まっている。しかしその全体性や複雑性ゆえに、測定や分析の方法論は確立されていない。本研究では、都市の全体的な在り方を「様相」という概念で捉え、街路空間の様相を、心理的側面と物理的側面の両方から、かつ定量的・定性的に解明する。
具体的には国内10都市における代表的ルートの全方位映像を被験者に示し、印象を話してもらうことで心理的様相に関するデータを取得し、そのルート周辺の建物や交通量を測定することで物理的様相を知る。そしてこれらを分析することで、都市の様相を総合的に明らかにする。
初年度には都市の実地調査に先立ち、各都市の街路の物理的構成を可視化・定量化するためのプログラムを開発した。3DモデリングソフトであるRhinoceros+Grasshopperを用いて、都市の街路図から半自動的に、街路の①幅、②方位、③勾配のそれぞれについて、(A)平面的配置を示すグラデーションマップ、(B)分布を示すヒストグラムを作成するものである。これにより、街路図が利用可能なあらゆる都市において、街路の物理的構成を統一的な手法で可視化できるようになった。
特に、街路幅に着目しその分布を解明できるのは、このプログラムの大きな特長である。申請者の学位研究において、広い通りでは規模が大きい商業的な建物が集まり、開放的で賑やかではあるが統一性には欠けると感じられ、細い通りではその逆になるという明確な傾向があった。つまり街路幅の構成によって、その都市の様相は大まかに把握できると考えられるのである。
また、街路を歩いて全方位カメラで映像を撮影し、それをVRゴーグルで被験者に提示する手法を、筆者が研究を進める新潟県長岡市をサンプルとして構築した。今後この手法を用いて、撮影と実験を進める予定である。